新しい点数計算方法を考える②

2020年3月22日

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新しい計算式の案

前回、麻雀の点数計算式として、比例・指数関数・指数関数の「補正」・2つの一次関数のそれぞれの場合について比較検討しました。

今のところは2つの一次関数を用いた場合がよさそうですが、次の気になる点があります。

  • 1翻→2翻のときは誘因の条件を満たさない
  • 2翻で場合分けをする合理性がない
  • 2翻→3翻のとき、突出して1翻当たり点数の変化量が大きい
  • 3翻以上では翻数が大きいほど、1翻増加したときの点数の増加量が小さい

さて、これらの点を改善する新しい計算式はあるのでしょうか?

実は一つあります。それは2乗です。

2乗はほどよく増大する

次式のように点数を翻数の2乗で計算する場合を考えます。

$$p = x^2 \tag{6}$$

これを前回の4つの場合と同時に表したのが次の図です。

2乗とその他の点数計算式

図より、2乗の場合は6翻までの間、指数関数よりも点数が大きくなっています。7翻以降において指数関数の方は急激に点数が増大するのに対し、2乗は比較的穏やかに増大しています。

次に1翻当たりの点数で比較してみましょう。

2乗とその他の場合における1翻当たりの点数

1翻→2翻では2乗の場合だけが誘因の条件を満たしています。また、翻での場合分けはありません。

さらに、1翻当たりの点数の変化量でも比較してみます。

2乗とその他の場合における
1翻当たりの点数の変化量(後方差分)

2乗の場合は1翻当たりの点数の変化量は常に一定です。

以上から分かるように翻数の2乗を点数とした場合は、すべての翻数において誘因の条件を満たし、かつ、2つの一次関数で気になっていた点をすべてクリアしています。さらに、13翻以降は点数が増大しないものとすると点数の上限は169点となり、これは許容範囲内だと思われます。

これはすばらしい! これからは翻数を2乗して点数を求めることにしましょう!

と言いたいところですが、そう話は簡単ではないのです…

1翻当たりの点数の増加率

ここから概念を明確にするために数式を用います。興味がない人は読み飛ばしてください。

点数は翻数の関数ですから、\(p = p(x)\)と表せます。このとき、1翻当たりの点数を\(q(x)\)とすると\(q(x)\)は

$$q(x) = \frac{ p(x) }{ x } \tag{7}$$

となります。

これを用いると1翻当たりの点数の変化量は

$$q(x) – q(x – 1) = \frac{ p(x) }{ x } – \frac{ p(x – 1) }{ x – 1 } \tag{8}$$

です。さらに、1翻当たりの点数の増加率を表現したものが(9)式です。

\begin{eqnarray} \frac{ q(x) }{ q(x – 1) } &=& \frac{ \frac{ p(x) }{ x } }{ \frac{ p(x – 1) }{ x – 1 } }\\
&=& \left( 1 – \frac{ 1 }{ x } \right) \frac{ p(x) }{ p(x – 1) } \\
\tag{9}
\end{eqnarray}

この式をそれぞれの点数計算方法でグラフに表してみます。

1翻当たりの点数の増加率(後方)

グラフを見ると2乗場合だけが2翻において2となっています。これは1翻に対して2翻における1翻当たりの価値が2倍になっていることを意味しています。そしてその増加率2は、13翻までにおいて、あの非常に「強い」関数である指数関数の増加率の最大値よりも大きいのです。

この価値が2倍に変化することはあまり好ましくないと私は思うのです。実際に試合をしてみると、おそらく2乗計算による1翻での価値は現代の麻雀における1翻での価値に比べ、小さくなりすぎると予想します。

2乗計算を左にシフトして1翻当たりの点数の増加率を抑える

これに対して、簡単な対策があります。それは1翻分だけグラフを左にずらすことです。式の上では\(x \to x + 1\)に置き換えることに相当します。ただし、そのままでは1翻が4となるので、1翻で1になるように\(\frac{1}{4}\)を全体に掛けます。結果として、新しい点数計算式は(10)式となります。

$$p = \frac{1}{4}\ (x + 1)^2 \tag{10}$$

この場合を「2乗シフト」と呼ぶことにします。2乗シフトのとき、2翻における増加率は下図のとおり1.2倍未満に抑えられます。

1翻当たりの点数の増加率(後方)
2乗シフトを追加

3翻で極大となってしまいますが、他のと比べ増加率は明らかに安定して変化します。1翻増えるごとに、1翻当たりの価値が1.07倍以上1.2倍未満の範囲内に収まっていますから、翻数に対してより中立的な計算方法といえるでしょう。

他の指標でも比較してみました。

点数

点数のカーブは2乗と比べ、「補正」や2つの一次関数の場合に近づいていることがわかります。

1翻当たりの点数

1翻当たりの点数は3翻以降でほぼ直線的に変化しています。

1翻当たりの点数の変化量

1翻当たりの点数の変化量は、「補正」や2つの一次関数の場合におけるそれぞれの最大値よりも2乗シフトの最大値は小さくなっていることがわかります。

以上から、2乗シフトの計算方法は1翻当たりの点数の増加率を抑えつつ、比較的「補正」や2つの一次関数に近い変化をすると言えそうです。

仮想的なアガリ翻数

2乗シフトは麻雀の点数に対して副次的な効果をもたらします。

もう一度(10)式を見てください。\(x + 1\)の\(1\)の数字、これは翻数と同じ次元を持っていると解釈してもよさそうです。

このような定数を現在の一般的な麻雀の点数計算式でも見たことがありませんか?

そう、上がるときに必ず付与される副底(フーテイ)です(似ている場ゾロは定数ですが、単に点数全体を定数倍しているだけなので、特に意味はありません)。副底は20符です。

同じように(10)式を解釈すると、\(x + 1\)の\(1\) は上がるときに必ず付与される1翻、いうなれば「アガリ翻数」と表現できます。

アガリ翻数を1翻とみなすと、これまで議論してきた1翻当たりの点数の計算結果も変わってきます。ここで アガリ翻数を含めた翻数を「仮想翻数」と呼び、これを\(x’ = x + 1\)と置くと、点数\(p(x) = p(x’ – 1)\)となります。これを\(x’\)で割ったものを仮想1翻当たりの点数\(q'(x’)\)とすると、仮想1翻当たりの点数、その変化量、その増加率は\(x\)と\(p(x)\)を用いてそれぞれ以下のように表せます。

\begin{eqnarray} q'(x’) &=& \frac{ p(x’ – 1) }{ x’ }\\
&=& \frac{ p(x) }{ x + 1 }\\
\tag{11}
\end{eqnarray}

\begin{eqnarray} q'(x’) – q(x’ – 1) &=& \frac{ p(x’ – 1) }{ x’ } – \frac{ p(x’ – 2) }{ x’ – 1 }\\
&=& \frac{ p(x) }{ x + 1 } – \frac{ p(x – 1) }{ x }\\
\tag{12}
\end{eqnarray}

\begin{eqnarray} \frac{ q'(x’) }{ q'(x’ – 1) } &=& \frac{ \frac{ p(x’ – 1) }{ x’ } }{ \frac{ p(x’ – 2) }{ x’ – 1 } }\\
&=& \frac{ x }{ x + 1 } \frac{ p(x) }{ p(x – 1) } \\
\tag{13}
\end{eqnarray}

上がりのみ、すなわち0翻も認めてグラフにしてみます。

仮想1翻当たりの点数
仮想1翻当たりの点数の変化量
仮想1翻当たりの点数の増加率

2乗シフトの場合、仮想1翻当たりの点数は一定となるのがポイントです。1翻の価値は翻が増えると常に一定量増加するとみなせるのです。

増加率の方は1翻でまた2倍となってしまいますが、アガリのみ役なしは点数獲得ではなく、早上がりで逃げ切るためと割り切って考えれば、0翻の点数が著しく低くとも納得が行くかと思います。

少し話は異なりますが、2乗シフトで0翻は0.25点となります。さすがに0翻0点でアガリ、というのはゲームとして違和感があります。この少しの点数があることが、得点したから上がれる、という一般的なゲームのルール体系から逸脱しない理由となると思います。

また、もともと1翻縛りは後から加わったルールですから、0翻0点となる2乗や比例、2つの一次関数はこれまでの麻雀の点数計算とそぐわない点があるのです。

加えて、前回(5)式で解説したように、純麻雀は無翻に例外的な点数を与えています。しかし、この2乗シフトの計算方法を用いれば、 0翻以上のどの翻数にも例外を作ることなく、点数を定めることができるのです。

まだある不満

さて、今までの議論から、麻雀の点数計算方法は(10)式で表される2乗シフトを用いるとよさそうです。

ところが、私はまだこの計算式にまだ不満があるのです。

それはロンとツモでの違いや親子の点数差を議論する前の、もっと麻雀の根幹にかかわる重要な点になります…。


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